事例紹介

事業者情報

株式会社ココダイバーシティ・エンターテイメント(東京オフィス)

所在地:東京都品川区北品川1-2-10
業種:芸能プロダクション
従業員数:5人
https://coco-de7.com

チャレンジドタレント専門芸能プロダクションの先駆

株式会社ココダイバーシティ・エンターテイメントは、日本でも数少ないチャレンジド(※)タレント専門の芸能プロダクションとして設立されました。
ソーシャルファーム事業所である東京オフィスでは、タレントのマネージメントを手掛ける制作部門、動画・イラスト・音楽を担うクリエイティブ部門、ウェブマーケティングを仕切るネット部門などを受け持ちます。2021年の第32回オリンピック競技大会(2020/東京)、東京2020パラリンピック競技大会を終え、2025年の大阪・関西万博に向け着々とエンターテイメントプランが進行しています。

 

※チャレンジドとは、障害などの事情を抱える人を表します。挑戦という使命や課題、挑戦するチャンスや資格を与えられた人を語源としています。

品川の東京オフィスでは次代に向けたプランが進行中

芸能界に関わりながら多様な生き方に出会う

大倉伸三(おおくらしんぞう)社長は、23歳で芸能プロダクションに入り、大物ロックアーティストが集結する大晦日のカウントダウンライブをはじめ、多くのステージをプロデュースしてきました。そうした中に、視覚障害のある方へのボランティア活動に非常に熱心なアーティストがおり、阪神淡路大震災の際は、大倉社長もボランティアとして物資を現地に運ぶなど、その方と行動を共にしました。この時以来、自身にボランティア精神が育まれたと振り返ります。その後、いったん芸能の世界を離れ大阪の美容院を経営しているとき、あるお客様から相談を受けました。

 

「私はネイリストを目指しているのですが、車いす利用というだけで専門学校に入れないのです」と言われ衝撃を受けました。そこで大倉社長はネイル技術をお客様に教えました。
このときから、チャレンジドの方々とのつきあいが本格的に始まったそうです。

 

やがて芸能関連のつながりから「こころのバリアフリー&ビューティーマガジンCo-Co Life☆女子部」というフリーマガジンの大阪版発行人の依頼があり、大倉社長が受託。

 

「チャレンジドの方のなかにも、芸能界に憧れる方はいっぱいいます。私は、こうした方たちを支え、夢に一歩でも近づけてあげたいと思い、チャレンジドタレントのマネージメントを始めました。すると、新聞、雑誌、テレビをはじめ多くのメディアから取材を受け、一気に多様性ある芸能プロダクションが注目を集めました」と大倉社長。

 

現在、株式会社ココダイバーシティ・エンターテイメントは、芸能分野でさまざまな角度から世の中に情報を発信する企業として展開しています。

最高のものを発信するために、所属タレントと綿密にコミュニケーション

チャレンジドタレントの将来をふまえ、表舞台と裏方、両方を指導

所属するタレントについて才能を見出し、経営にもひと工夫の大倉社長。
「チャレンジドタレントたちは、オーディションにすべて自分で応募してきています。そこが大事なのです。ある目的をもって自分の意志でチャレンジする。この前向きな姿勢があってこそ、輝く舞台へのスタートラインに立てるのだと思います。
同時に、チャレンジドタレントたちには裏方の仕事も経験してもらっています。SNS発信をはじめ広報やパソコンを使った事務など、各々の個性に合った仕事を受け持ってもらい、エンターテイメントの表舞台、そして裏方の両方を知ってもらいます。というのも、彼女ら彼ら全員が華やかな舞台に立てるわけではありません。やがてあるかもしれない引退を決断するべき時に向けての準備として大切です」と、将来へ向けた的確なサポートを心がけています。
事業部制で経営される同社は、ゆくゆくは各事業部が独立採算で運営されることを前提とし、各事業部のトップに、業界のことがわかる経験豊富なチャレンジドタレントたちが立てるよう指導されます。
「さまざまな個性を持った方が、それぞれの持ち場で自主的に動く。やがて会社の経営全般に関わる。こうした構想が、ソーシャルファーム制度が持つ考えと一致しました」と大倉社長。

 

東京2020パラリンピック競技大会では同社所属の富田安紀子さんらのタレントたちが開会式でのバンドパフォーマンスやプラカードベアラーで参加。また選手村でのビューティネイリストに従事するなどして大活躍となりました。

(写真提供:(株)ココダイバーシティ・エンターテイメント(東京オフィス) (c)shinzone) 東京2020パラリンピック競技大会開会式に参加し大会を盛り上げた富田安紀子さん

大阪・関西万博に意欲 SNS発信にも新構想

同社のビジョンの一つとして、2025年の大阪・関西万博に向け、さまざまなプランを練っています。

「1970年の日本万国博覧会を地元で経験した私にとって、やはり国際博覧会は30年後、50年後の社会への提案です。現在、チャレンジドタレントが車いすに乗ったまま宙に浮かび、演奏し歌う『空飛ぶ車イス』構想を企画しており、さまざまな企業、団体に提案する計画です」と意欲的な大倉社長。

 

また同社ホームページでは、VTuber(※)というヴァーチャルキャラクターでも情報発信。エンターテイメントの裾野を広げ、こころのバリアを外すための活動を積極的に行っています。さらに、さまざまな個性を持ったエントリータレント(キッズタレント)の保護者ブログは開設初日で25万もの閲覧数を記録するなど大きな反響を呼んでいます。

 

「全国の同じような環境を持つ親世代や、育児の気持ちや深さが共感につながったのだと思います。また保護者パパママワークショップも全国規模にしていきたいです」とのこと。

 

こうした取り組みを通じ、同社は現在、身体・精神・難病を含む総合的なチャレンジドタレント専門プロダクションとして際立つ存在に成長しています。

 

※VTuberとは、Virtual YouTuberの略語。仮想キャラクターの外見で活動するYouTuber。

さまざまな機材を駆使して、新鮮な情報を創り発信していきます。

夢は世界に通じる実力派エンターテイナー

4歳から始めた和太鼓は師範の称号を授与されるほどの腕前。同社専属チャレンジドタレントのトップをゆく富田安紀子(とみだあきこ)さんは、幼い頃から人前に出て注目される仕事に就きたいとの願いが叶い、同社との契約に至りました。

 

「小学生の頃、目の病気にかかり2018年、26歳の時に左目が義眼になりました。右目は弱視です。実は、義眼を入れたことで何事にも前向きに、自信を持てるようになりました。今ではラジオパーソナリティ、パーカッションパフォーマー、シンガー、モデル、講演会講師をはじめマルチに活動しています」とのこと。

 

一見、華やかに見えるエンターテイメントの表舞台ですが、普段からの準備を徹底してこそ、初めて花開くと富田さんは考えています。
「食事制限などでスタイルをキープするのはもちろん、毎週行う事務所レッスンでは、現役の女優や元局アナの方による、とてもハードな演技、セリフ、トークの指導と宿題があります。さらに自分で費用を支払いボイストレーニングなどのレッスンも受けています。この世界に入って、一流と呼ばれる方々がいかに、厳しいトレーニングを積んでいるかを学びました。先輩方に追いつくために、今、時間もレッスンへの投資もすべて将来に向けて必要なことと考えています」と富田さん。
「音楽以外にもいろいろなチャレンジをし、一人でも多くの方にパワーを伝えたいと思っています。和太鼓の技術をさらに磨き、日本だけでなく、世界で通用するエンターテイナーを目指します!」と、素敵な笑顔を見せてくれました。

得意の和太鼓のスキルを上げ、いつか世界の舞台へ!

(令和4年2月取材)