事例紹介

事業者情報

株式会社アニスピホールディングス(ソーシャルファームUmidas立石)

所在地:東京都葛飾区立石5-16-3 102
業種:印刷、封入事業(名刺・封筒・パンフレットの印刷・封入)、買取販売事業(ゲーム・家電等の買取り、出品)
従業員数:7名
https://www.umidas-tokyo.com/

主要事業をソーシャルファームからサポート

『Umidas立石』は2021年12月から事業をスタート。チラシや名刺、パンフレットなどの印刷・封入業務を中心に事業を展開しています。数ある“仕事”の中から、なぜこの事業を選択したのでしょうか。
「私たちは主に、“人間福祉と動物福祉の追求”という理念のもとグループホームやデイサービス事業などを展開しています。中でもペット共生型障がい者グループホーム『わおん』『にゃおん』の事業所は、2022年7月1日付で1,000拠点を達成。これらの運営には施設紹介のチラシや名刺などが欠かせません。その印刷や封入作業は就労支援になじむと思い、ソーシャルファームを立ち上げることにしました。導入した印刷機が想定より大きく、家庭用の電圧では作動しないため物件探しが非常に難航しましたが、無事に開設することができました」と代表取締役の藤田英明さん。主要事業をソーシャルファームから支え、安定的に仕事を供給できる仕組みを構築。就労に困難を抱える方の雇用・定着をサポートできる体制を生み出しました。

一人ひとりが仕事に対する考えや対応方法を、自発的に生み出すことに“楽しみ”を感じられる環境を目指しているそう

多様な人が働ける場所をつくりたい

代表取締役の藤田さんは大学の社会学部で社会福祉を専攻。卒業後は社会福祉法人に介護職員兼生活相談員として就職し、その後、事務局長・施設長・理事として同法人の運営に携わってきました。その後、2016年に㈱アニスピホールディングスを設立しました。
「日本では主な障がい者就労支援に就労継続支援A型事業やB型事業などがありますが、働きたくても働く場所がないのは障がいがある方だけではないと以前から考えていました。アニスピホールディングスは、“イシュー・ドリヴン・カンパニー”(社会課題を解決することによって成長していく会社)。だからこそ引きこもりを経験した方、病気が原因で職場を離れた方、一人でお子さんを育てている方など、多様な方に働いてもらえる場所を提供し、より良い生活を送ってもらいたいと考えたのです。ちなみに私自身も就職活動の際に金髪・Tシャツ・短パンで行ったことがあります。見た目や背景に左右されない多様な人が当たり前に働く場所をつくりたかったんです」と藤田さんは教えてくれました。

「多様な人がいることが当たり前になるように」との想いから、いつもスーツを着ずにラフな格好をしている代表取締役の藤田さん

あえて特別扱いせずに“後輩”としてフランクに

様々な角度から福祉業界をサポートしている同社ですが、ソーシャルファームは初の試み。就労に困難を抱える方を雇用するうえで心がけていることはどんなことでしょうか。ソーシャルファームの立ち上げに携わり、現在は所長として『Umidas立石』に勤務し、就労に困難を抱える方のサポートに携わる加藤菜摘さんにお話を伺いました。
「現在は知的障がいのある方、筋ジストロフィー症という病気を抱える方、引きこもり経験のある方などの4名が勤務しています。体調とのバランスをみながら休憩をとってもらったり、わかりやすい言葉で指示を出したりと配慮するようにしていますが、あえて特別扱いはしません。むしろ、自ら動き協力しながら働く環境をつくりたいので、“後輩”としてフランクに接しているんですよ。そのおかげか、会議で自分がやってみたいことや改善したい点を、積極的に発言してくれるようになったのは本当にうれしいです!代表の藤田は福祉のプロですが、私は福祉業界で働くのが初めて。最初は不安でしたがアニスピホールディングスには、代表を筆頭に障がい者支援に30年以上携わっているベテランの職員もいるので、困ったときは相談に乗ってもらえるなど、私自身も安心して働けています」。従業員の成長を日々見守りながら、加藤さん自身も『Umidas立石』で新しい自分を発見しているようです。

「みんなが“こんなことをやってみたい”と前向きに働いてくれるのが、とてもうれしいんです!」と笑顔の加藤さん

目標は東京23区すべてに『Umidas』を展開すること

2021年12月のオープンから約8ヶ月。ソーシャルファーム事業に取り組む藤田さんと加藤さんの夢は、さらに広がっています。
「シングルマザーをはじめとした一人で子育てをしている方や、過去に過ちを犯してしまった方など、これまでの背景にかかわらず多くの就労に困難を抱える方に働くチャンスを提供できればと考えています。そのために彼らをサポートする職員の増員も計画中です。多様な人が働ける場所をつくれればと思っています」と加藤さん。そして藤田さんの夢はさらに大きく、アニスピホールディングスの事業を支える“なくてはならない存在”としての活躍にも期待しているそう。「現在は立石近辺に住んでいる方を中心に雇用していますが、できる限り多くの就労に困難を抱える方に働いてもらいたいので、拠点をどんどん増やしたいと考えています。目標は東京23区すべてに『Umidas』を展開すること!ペットフード開発やトリミングなど、アニスピホールディングスの主な事業と連携しペット系事業にも取り組みたいと考えています。」と藤田さんは展望を語ってくれました。

将来的にはペット関連の事業も展開予定。『Umidas』はこれからどんどん新しいものを生み出していく

新しいことができるようになるから仕事が楽しい!

2022年1月に入社して週4日勤務している佐々木さんは、『Umidas立石』で働くことで新しい自分に出会えたそう。
「印刷されたチラシや名刺などの封入作業をメインに作業を行っています。最初からいきなり色々な業務を任されることはなく、様子を見ながら徐々に増やしてくれたので、できることが増えました。自分はミスが怖いので新しいことに取り組むときは、加藤さんにいろいろと質問してしまうのですが、いつも親切に教えてくれるんですよ。そしてテキパキと情報を共有してくれるので、チームとしての働きやすさも実感しています。最近ではパワーポイントを使って名刺の作成をすることにもチャレンジしています!新しいことができるようになり、働くことを通じて自分の成長を感じています」とうれしそうに教えてくれました。

最近は名刺の制作にもトライ!わからないことは聞くだけでなく、本を買ってきて自ら調べることもあるそう

手を挙げたら印刷機のオペレーションを任せてもらえるように

田代さんは『Umidas立石』のオープンから働いているメンバー。これまで仕事を続けられている理由に“自分の成長”を挙げてくれました。
「私は印刷物をパンフレットのデザインに合わせて折ったり、発送をしたりといった作業を行っています。最近は、加藤さんにいろいろ質問しなくてもできることが増えてきました。そこで新しい業務にチャレンジしてみたいと申し出たところ、印刷機のオペレーションも任せてもらえるようになりました!さらに、毎日の業務日報の作成を通じて、苦手なパソコン操作も少しずつできるようになってきました。朝起きて憂鬱な気持ちのときもありますが、自分ができることが増えたことがうれしいですし、休まず続けられています。一緒に働く人たちがみんないい人なのも、この仕事を続けられている理由のひとつなんですよ」。

 

(令和4年9月取材)

自ら“やってみたい”と手を挙げることで可能性を広げられるのも、『Umidas立石』で働くうえでの大きな魅力だそう