事例紹介

事業者情報
一般社団法人アプローズ(APPLAUSE GARDEN)
所在地:東京都港区南青山4-8-4 パレス南青山1F
業種:フラワーショップ(アトリエ)
従業員数:5人
https://applause-aoyama.com/
行政での経験を活かし 障害のある方の社会参加を積極的に
母親が特別支援学校の教員をしていたことから、幼い頃より福祉の世界に興味を持っていた代表理事 光枝 茉莉子(みつえだまりこ)さんは、大学で本格的に福祉を学び、在学中に社会福祉士の資格を取得しました。東京都福祉保健局(都庁)に在籍した8年間、行政の側から福祉の世界を見続けるなかで感じたのは、障害福祉事業所での賃金(工賃)の低さに対する驚きでした。ぜひ自らが動いて、障害のある方をもっと社会に送り出したい。そうした強い思いから一般社団法人アプローズを起ち上げたのは、2014年のことです。
当時、福祉作業所としては全国初のフラワーショップであったため、その新しいスタイルが注目を集め、利用者の定員20名に対し、なんと60名を超える申し込みがありました。通所日等を調整することで、ご希望のあった方全員を登録し受け入れることができました。それから毎年、花屋や企業などへの就職により、卒業生たちを輩出し続けています。このことから、働く環境やきっかけ次第で、彼らが十分に社会に出られる可能性があることを実感しました。

省庁関連の取引先を増やし 事業の長期安定を
2021年、東京都の認証ソーシャルファーム事業所としての予備認証を受け開設したのが、APPLAUSE GARDENです。精神・知的障害のある方、シングルマザー、家族に介護・療養が必要な方など就労に困難を抱える方を受け入れています。生花に加え、プリザーブドフラワーやアーティフィシャルフラワーなどのアレンジメントの受注販売、観葉植物・花壇の手入れなどを行っています。
「今後は、現在契約中の外務省の公館等をはじめ、省庁関連の年間を通じた大口契約を増やすことが大きな目標です。長期契約によるますます安定した事業継続に向け、きめ細やかな品質管理、従業員対応などを心がけています」と光枝さん。

専任従業員の協力のもと 的確なサポートを心がけて
就労に困難を抱える方を雇用する上で、光枝さんは、社会福祉士の資格を持ちカウンセラーの役割も担う従業員とともに、きめ細かい配慮を心がけています。従業員の体調管理ノートには、検温や体調だけでなく、家庭の様子なども記入してもらいます。気になる内容があるときは必ず声をかけ、必要であれば面談し業務内容の変更を含め、本人に合ったより効果的な方法でサポートしています。
「本人の体調や家族の都合による急な欠勤、遅刻などの場合は、ともに働く従業員の作業やシフトを工夫することで、無理な負担がかからない体制を整えています」とのこと。APPLAUSE GARDENならではの柔軟な姿勢が感じられます。

従業員もお客様も幸せになれる “お花屋さん”を目指して
現在、APPLAUSE GARDENはアトリエ方式(受注生産方式)で花屋を運営していますが、将来的には路面店での販売も視野に入れています。
「店頭での小売販売はお花のロスをいかに少なくするかがカギになってきます。それでも店頭販売はお客様と直に接し、自分でアレンジしたブーケなどをお勧めでき、売る側も買っていただけるお客様も幸せな気分になれる点が大きな魅力です。スタッフたちには、お花の仕事を通じて働く喜びを体感してもらえたら嬉しいです」と光枝さん。


希望していた花関連で働き続けられることに喜び
高校生の頃、プリザーブドフラワー・アーティフィシャルフラワーの資格を取り、卒業後、お客様から個人で仕事を受けていた伊藤美朝(いとうみささ)さん。2021年6月開設と同時にAPPLAUSE GARDENで働き始め、取材時には、ちょうど半年ということでした。
「生花の経験を積みたいと思っていた私にとって、APPLAUSE GARDENはぴったりでした。配送、観葉植物・花壇のメンテナンス、花のアレンジといろいろな業務を行っていますが、取引先で花が置かれる場所の雰囲気やご担当者の反応を常に意識しながら業務を続けています」と伊藤さん。徐々に経験を積みながら手応えを感じています。
「初めは長続きするだろうかと思っていましたが、楽しく働かせてもらっています。私自身の通院や子どもの急な発熱などがあっても、『いってらっしゃい』と送り出してもらい、次の出勤時には『大丈夫だった?』と迎えてくれる環境があるのはありがたいです。現在の目標は、スタイリッシュなものからナチュラルなものまで幅広く花のアレンジメントを習得することです」とのこと。働きやすい環境のもと、充実して仕事に取り組んでいるようです。

東京・青山を舞台に ともに楽しさあふれる毎日を
岸本 琢(きしもとたく)さんは、一般社団法人アプローズが運営する障害福祉事業所での経験を含め、当社で働き始めて3年目になります。就労に困難を抱える方が身近で働く環境だけに、彼らへの過剰な親しさはかえって抵抗感を持たれる場合があることをふまえ、プライベートな内容にはあまり踏み込まないよう留意しています。また、大田花き市場で勤務していた前職の経験を活かし、お花の品質管理や営業上の戦略などには的確に助言を行います。
「東京・青山と言えばファッション、グルメ、アートなど生活全般にこだわりのある地域です。フラワーショップも激戦区なので、他店といかに差別化を図るかが大きなポイントです。従業員とともにいろいろなアイデアを出し合いながら、クオリティの高い商品を開発し、提供できることが楽しいですね」
(令和3年12月取材)
