事例紹介

事業者情報
自社で展開するイベントの情報をSNSや動画で発信!
バリアフリーeスポーツ事業や就労支援事業をメインに運営する株式会社ePARAは、2023年にソーシャルファームとして『Any%HOUSE(エニーパーセントハウス)』を設立。SNSや動画などを通じてePARAに関わる障害者の方々の活躍を発信するための情報拠点となっています。代表の加藤大貴さんに、ソーシャルファームの事業内容について伺いました。「『Any%HOUSE』で行っているのは、ePARAで運営しているeスポーツイベントや就労イベントなどの情報を発信するSNSやブログの運営、車椅子eサッカーチーム『ePARAユナイテッド』の動画や、目が見えない方の日常を知っていただくための縦型動画の制作や出演などがメインとなります。現在は車いすユーザーや視覚に障害を持つ方の計3名が活躍していますが、eスポーツの知識はあってもこのような業務は初めての方ばかり。働きながらeスポーツの知見を活かすと同時に、仕事に必要なノウハウを身につけてもらっています」と加藤さんは笑顔で話してくれました。

障害者との“接点”を増やしてインクルーシブな世の中に
加藤さんは大学卒業後、公務員として勤務。あることをきっかけに未経験で福祉業界に飛び込んだそうです。「公務員として8年間勤務しましたが、祖母の病気をきっかけに“自分も福祉にかかわりたい”と思うように。思い切って、社会福祉協議会に転職しました。そこで気づいたのは福祉が必要な人=支援しなければいけない人と身構えていましたが、皆さん“普通”だということ。しかし、その普通の生活を営む中で福祉がフォローしてあげなければいけない部分もある。コミュニケーションを取りながら必要に応じて対応するための“接点”を増やすことこそが、インクルーシブな世の中の実現につながるのではないかと思いました。接点をつくる活動を模索する中で、楽しみながら障害者と健常者が交流できる場になればと、2019年にバリアフリーのeスポーツイベントを開催したところ、ここで接点が生まれたことにより複数人の就労が決まりました。これをきっかけに、ITスキルが高い人や、eスポーツができる方たちをより輝ける企業での就労につなげたいと思い、2020年にeスポーツを通じて障害者の活躍を支援する『ePARA』を立ち上げました」と加藤さんは当時を振り返りました。

心と体と向き合いながら、自分のペースでゆっくりと──
「最初は情報発信に使う動画・記事を外注制作していましたが、内製化することで就労支援にもつなげたいと思い、『Any%HOUSE』を設立し、2023年に東京都からソーシャルファームとして認証を受けました。私たちが目指すのは『多様性を内包して、それぞれの強みを活かして補い合いながら1つのチームとして目標を達成する場所』。活躍中の3名の仕事は、それぞれの得意を活かす形で決めました。最初は動画制作経験のある車いすユーザーのインフルエンサーの方に協力していただきながらマニュアルを作成したり、伝え方などをレクチャーしていただいたり、勉強の機会を多く設けました。東京都の認証を受けたソーシャルファームでは、支援者の人件費や就労に困難を抱える方の研修費用も補助を受けることができます。このような環境が整っているからこそ、就労に困難を抱える方が自分自身の心や体ときちんと向き合いながらスキルを伸ばしていけるので助かっています」と加藤さん。

「ここでなら私も誰かの役に立てるかも!」と思ったんです
SNSの運用や動画制作などを担当している実里さんは、大学卒業を機に九州から上京。2023年4月、『Any%HOUSE』での就業を前提に社会人生活をスタートしました。「視覚障害を持つ声優・ナレーターとして活躍なさっている方と以前から知り合いだったのですが、その方に『イベントに出るから動画を見て』と言われたのをきっかけにePARAの存在を知りました。当時の私は大学で心理学や福祉の勉強をしていて、障害者支援についても学んでいました。このようなタイミングで『eスポーツを通じて障害者を支援する』というePARAのコンセプトを知り、ここでなら私も誰かの役に立てるのでは!と思い加藤さんに連絡したところ、『Any%HOUSE』で働くことになりました」。

地元・九州でeスポーツのイベントを開催し、情報を世界へ!
入社して約2年。実里さんは、どのようなところに仕事のおもしろさを感じているのでしょうか。「SNSの運用や動画制作など情報発信に関する部分を担当していますが、eスポーツのイベントなどで実際にプレイヤーの方と交流する中で、障害のある方から『自分でもeスポーツができるんだと思いました』と直接声をかけていただいた時などにやりがいを感じます。私自身はこれまで障害のある方と接したことがほとんどありませんでした。だからこそ、皆さんとお話をしたり、eスポーツをしたりしながらコミュニケーションをとることで、自分自身の視野もグッと広がりました。いろいろな方と関わり働く中で、地元の九州でeスポーツの大会を開催することが目標になりました!ePARAはいろいろなところでイベントを行っていますが、東京や大阪などの大都市部が中心です。だからいつか九州はもちろん他の地域にも活動を広げて、その情報を自分の手で世界へ発信できればと思っています」。

ePARAが目指すのは「楽しそうだから関わる障害者支援」
今年1月、ePARAは「社会課題の解決」と「持続可能な成長」を両立しながら、社会に対してポジティブな影響を与える企業としてリスタートすることを宣言しました。この変化が、ソーシャルファーム『Any%HOUSE』にどのような変化をもたらすのか、加藤さんに伺いました。「『Any%HOUSE』は発信した情報に対する反応をどのように伸ばしていくかが、一番の課題であり試みです。これからはSNSや動画を見たテレビや雑誌、Webメディアからの反応を広告換算値として出して、ソーシャルファームのみんなで目標を追っていきたいと思っています。さらに今年の6月にはフリーペーパー『ePARAアフタースクール(仮)』を創刊予定。学校などに配布することで先生や生徒さん、その親御さんへのタッチポイントを増やし、私たちの活動を今よりも多くの人に広げていきたいと思っています。障害者支援というとどうしても“かわいそうだから関わる”という方が多いのですが、“ePARAは楽しそうだから関わる”と思ってくれる方を増やしていきたいです!」。
(令和7年2月取材)
(令和7年2月取材)
