事例紹介

事業者情報

TSUMUGU WORKS株式会社

業種:インサイドセールス(内勤型営業)事業
従業員数:5名
https://tsumugu-works.co.jp/

シングルマザーが自宅で仕事と子育てを両立できる環境を

TSUMUGU WORKS株式会社(つむぐワークス)は、ひとり親世帯が子育てと仕事を両立できる“働き方”を創出するために立ち上げられました。同社では、提案力や決定力の低下、人材不足など、営業活動に悩みを抱える企業から業務を受託し、シングルマザーである社員が自宅で電話やメールによる商談のアポイントの代行、クロージングなどのインサイドセールス事業を行っています。令和4年7月に東京都からソーシャルファームの認証を受け、一人で子育てを担う女性の就労を支援している同社ですが、このような働き方を実現しようと思ったきっかけを代表の小原光弘さんに伺いました。「私は、大学を卒業後、IT系の商材を扱う営業として勤務していましたが、より情熱を傾けられる仕事を探すため、25歳で独立しました。インサイドセールス事業を個人で請け負う一方で、フリーになり捻出できるようになった時間で、自分が進むべき方向を模索していました。そんな時に偶然目にしたのが“子どもの貧困”について取り上げていたテレビ番組でした。以前からソーシャルビジネス(社会問題を解決することを目的とした事業)に興味があった私は、すぐにシングルマザーの支援団体に連絡をして、IT系の資格取得のバックアップを中心とした就労支援スタッフとして1年間勤務しました。そして、営業経験と就労支援経験を活かして、TSUMUGU WORKSを立ち上げました」と小原さんは当時を振り返りました。

「シングルマザーの支援団体では約15名のシングルマザーの方の、IT系の資格取得をバックアップしました」と小原さん

正社員と同じ福利厚生と高時給、臨機応変な勤務体制で生活と子育てをバックアップ

一般的に会社に所属する従業員の雇用形態は大きく分けると、正社員や契約社員、パート・アルバイトなどに分類されますが、小原さんがTSUMUGU WORKSで打ち出したのは「パート正社員」という働き方です。「仕事に必要なパソコンやWi-Fiルーターなどは、会社で支給しており、正社員と同じ待遇で、時給は1,600円と高めに設定しています。リモートワークで勤務時間は1日8時間、残業は1年間を通じて1時間もありません。さらに有給休暇を1時間単位で取得できるので、お子さんの学校行事や通院などにも対応しやすくしています。お子さんが小さいと、急な発熱などで想定外のお休みを取らなければならない時も出てしまうと思いますが、罪悪感を持ってほしくないので、『休みます』と簡単な連絡をしてくれるだけでいいからと伝えています」と小原さん。在宅での仕事というと横のつながりが希薄になりそうですが、そこも小原さんの配慮で、同僚であるシングルマザー同士の交流の場を設けています。「仕事終わりの30分間は、毎日オンラインで(社員による)ママ会を開催しています。私は参加しないため、ここは完全にママさん達だけの時間。仕事のことはもちろん、子育てやプライベートの話などもしているようです。ちなみにママ会も勤務時間内としていて時給が発生しているので、『ママ会が盛り上がって残業になっちゃった…というのはやめてね』とお願いしています」。

「ママ会はリフレッシュの意味も込めて開催。子育ての悩みを先輩ママさんに相談している社員もいます」

営業未経験、パソコンも苦手なところからのスタートでした

Aさんが「パート正社員」としてTSUMUGU WORKSに採用されたのは、昨年7月のこと。それまで営業の経験は全くなかったそうです。「結婚前には一般企業に総合職として10数年勤務していました。そして、シングルマザーとなってからは子育てをしながら、アルバイトを転々としていました。TSUMUGU WORKSを知ったのはシングルマザーの支援団体からの紹介がきっかけだったのですが、子どもを中心とした働き方ができるのではないかと思い、自ら小原さんにアプローチした結果、入社することができました。実は営業の仕事が初めてなだけでなく、パソコンがものすごく苦手で…お役に立てるか正直不安ではありました。でも、パソコンの使い方やWi-Fiの接続の仕方まで小原さんが教えてくれた上に、営業のロールプレイングの研修をして、慣れるところから始められたので、安心してスタートを切れました。あと、ノルマを個人ではなくチームで負うスタイルも、営業初心者の私にとっては良かったのかもしれません」。

「パート正社員」になり、家庭ファーストな働き方が実現できました

TSUMUGU WORKSでパート正社員として働くようになって、Aさんにはどのような変化があったのでしょうか。「うちの子は病気がちなのですが、以前の勤務先では頻繁に休むわけにいかなかったので、子どもには頑張って登校してもらっていました。しかし今は、リモートワークということもあり、少しでも子供の体調に変化を感じたら、無理をせずに休ませてあげられるようになりました。あと、以前は“もっと子どもと関わりたい”と思っていても、自由な時間もなく、仕事と家事に追われ心身ともに疲れてしまい、理想とは程遠い日々でしたが、今は子ども中心の生活を送れています。これも全て『家庭ファースト』を掲げる小原さんのおかげです。感謝してもしきれませんし、とても恵まれていると思っています。最初は不安だった営業の仕事ですが、入社から1年経った今はとても楽しく働いています」。Aさんは明るい声で教えてくれました。

TSUMUGU WORKSでは、主にインサイドセールス及びカスタマーサクセスの分野を担っている(資料提供:TSUMUGU WORKS株式会社)

3~4年後には100名のシングルマザーを雇用できる会社に!

現在はIT企業の商品や広告会社のPR枠の営業代行、人材派遣会社の求人開拓など着実に顧客を増やしつつあるTSUMUGU WORKS。順調に成長を遂げている同社のソーシャルファームとしての展望や採用について、小原さんに伺いました。「弊社の『パート正社員』の営業は、全くの未経験の方が多いですが、私たちがここまで事業を拡大できたのは、様々な人生経験を積んだシングルマザーである社員の方々が持つ“力”のおかげです。その凄さを世間に幅広く知っていただくためにも、多くの方に門扉を開ける会社に成長したいです。目標は3~4年後に約100人の『パート正社員』を雇用できる会社になること。そのためにも、私が頑張ってより多くの仕事を獲得したいと思っています」。

 

(令和5年8月取材)

「シングルマザーの方々が培われてきた様々な経験と守るべきものがある責任感は、大きな強みだと思います」と小原さんは語る