事例紹介
事業者情報
東京都ビジネスサービス株式会社(障がい者雇用デザイン室)
所在地:東京都新宿区高田馬場1-4-15 大樹生命高田馬場ビル2F
業種:障害者雇用コンサルティング事業
従業員数:連結492人(内当事業所5人)
https://sk-design.tokyotobs.co.jp/
障害のある方の社会参加を企業として支える
東京都ビジネスサービス株式会社は、重度身体障害のある方の社会的・経済的自立を促進するため、東京都が出資しモデル事業として1986年に設立されました。IT関連企業である株式会社システナの特例子会社として、ITサービス、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービス、障害者活躍支援サービスの3つの事業を展開しています。
「仕事を通じて社会に貢献したい」と願いながらも、障害のためにその機会を得られにくい方を支え続け、36年。社会情勢や環境、技術が変化する中、「Growing & Inclusion」をコンセプトに多くの方をサポートしています。同社においても障害のある方を受け入れ、現在約90名が在籍。障害のある方もない方も一体となって、多様性ある職場を実現しています。
多様性ある雇用の支援をさらに深化させるために
同社は、以前は、法定雇用率を確実に達成することに軸足を置いていましたが、昨期から、この雇用支援の姿勢をさらに深化させ、雇用するだけでなく一人ひとりが前を向いて成長する、活躍できる環境を作っていく取組にシフトしました。
これを受け、ソーシャルファーム認証事業所である「障がい者雇用デザイン室」では、障害者雇用に関する各種コンサルティングサービスを提供。企業や官公庁から相談を受け、障害のある方が活躍するための課題解決に対応し、各種コンサルティングや定着支援、人材紹介などを行っています。
根津史明(ねづふみあき)社長によると
「『障がい者雇用デザイン室』では、時間に制約がある中でも効率よく成果を上げられる優秀な方たちに出会えました。こうした優秀な方の就労機会を増やすため、やるべきことは多いです。海外に比べ、日本ではソーシャルファームについてまだあまり認知されていませんが、こんな働き方がある、こんな活躍ができるという事をぜひ知っていただきたい」とのこと。今後は当事業所の経験を積極的に発信していきたいそうです。
従業員をサポートしつつ育むチャレンジ精神
同事業所では、従業員に対し自身が抱えている困難を制約と考えず、むしろ強みを活かすことを意識してチャレンジしてほしいと考えています。
「仕事はその人の自発的な意思が重要で、周囲のサポートにはどうしても限界があります。働き方の柔軟性や納期についての配慮などはもちろん必要ですが、チャレンジする中で、自分なりの仕事観を育み、生活面とのバランスも取れるよう成長し、活躍の場を広げてほしいと願っています」と根津社長。
与えるのではなく、皆で創っていく。担当した業務をこなしながら、新たな可能性を見いだす姿勢も大切にしていることが伺えます。
企業と障害のある方の橋渡し役として
2021年9月入社の野口佳代子(のぐちかよこ)さんは、障害者雇用コンサルティング事業のアシスタント業務を担当。メールや電話で、障害者雇用に関する相談を企業から聞き取り、新規開拓につなげます。
「人と関わるのが好き」と話す野口さんは、大学卒業後、特別支援学校の教員、学童クラブの指導員、保育士などとしてキャリアを重ねていましたが、転機が訪れます。
「実は4歳から難病をもっていましたが、ずっと隠して、現場職として頑張ってきました。忙しく働く中で薬の管理ができず、新たな病気を発症してしまったのです。施設長まで務めたキャリアを転換することに悩みましたが、働き方を見直すことにしました」と振り返ります。
その後、さまざまな就労移行支援機関に通いましたが半年間は泣いてばかりいたという野口さん。「私の場合は、難病がありながら障害者手帳を取得していないため、就職に苦労しました。ある時、難病専門の就労移行支援事業所で、親身になって相談に乗ってくれる支援員に出会い、ハローワークの難病患者就職サポーターの応援も受けて、ソーシャルファームに採用が決まりました」
「今は、身体に無理をすることなく働けて、ありがたいと感じています。同じ悩みを抱えている方がたくさんいると思いますが、希望を捨てないでほしいと思います。今後は、企業と障害のある方との橋渡し役として、できることを増やしていきたいです」と将来に向けた、明確な目標を語ってくれました。
ITテクノロジーの進化で未来に向け新たな活躍の場を
「『就労に困難を抱えるから』『障害があるから』と、そこで区切ってしまうと制限ができてしまいます。世の中には、障害に限らず、就労に様々な困難を抱える方がいらっしゃると思いますが、誰もが活躍できる社会を目指したいと思います」と根津社長。
「そのカギとなるのは、飛躍的なITテクノロジーの進化です。アナログ中心の時代にはできなかったことが実現できるようになりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む社会のもと、最近ではテレワークなど働き方の変遷もあり、こうした時代の流れを利用することで『障害のある方が活躍する』といった言葉すらも無くなってくると信じています」と根津社長は期待を込めます。
昨今の環境変化により、社会全体の働き方が大きく変わり、従来の一極集中型から分散型の就労に移りつつあります。同事業所では、障害者雇用にお困りの企業などに対し、コワーキングスペースでの作業を含めた新しいワークスタイルの提案を図り、このプランに向けた人材の育成を今後、さらに推進していきます。
(令和4年1月取材)